大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)1053号・昭42年(ワ)1709号 判決
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〔判決理由〕一、原告が亡橋本隆の実母であること、被告大阪土建が土木建築請負を業とする会社であること、亡隆は同四二年一月一二日訴外森山土建株式会社から被告大阪土建に出向し、松原市三宅町一、〇七一番地所在被告松原シャーリングの軽量鉄骨構造三階建社屋の屋上コンクリート工事に従事中、その約1.5メートル上方に架設されていた被告関西電力所有の六、〇〇〇ボルト高圧電線に頭部を接触させ、感電即死したことはいずれも原告と被告松原シャーリング、同関西電力の間に争がない。
右争いのない事実に<証拠>を総合すると、被告松原シャーリングは同四一年にその三階建社屋の新築工事を被告大阪土建に請負わせたこと、右社屋は地上約9.5メートルの高さがあり、本件高圧電線がさらにこの約1.5メートル上方を一部斜めにかすることになつて危険なので、同年一一月末から一二月初にかけて鉄骨組立工事をしていたとき、被告松原シャーリングは被告関西電力河内長野営業所に右工事に危険な部分の高圧電線にポリエチレン絶縁管で被覆をしてもらつたこと、その際被告関西電力河内長野営業所は、被告松原シャーリング代表取締役仲谷泰輔に右処置はあくまで応急措置であつて絶対安全とはいえず、雨に濡れたり管の継目が外れた場合には危険であるから電線に接触したり、物を接触させたりしないよう注意を呼びかける文書(丙一号証の一)を交付していること、被告松原シャーリングは被告関西電力に対して三階建の建物を本件現場に建築しないという約束をしたことはないこと、本件事故当日の朝、工事を開始する前に仲谷泰輔が右ポリエチレン管が被覆をした位置からずれているのに気づいて被告関西電力羽曳野営業所に電話したところ、担当者から「すぐ行くが行くまで絶対に作業させないよう」という指示があつたので、亡隆を含む被告大阪土建従業員にその旨伝え、作業しないよう言つていたにもかかわらず、目を放したすきに亡隆等が作業を始め本件事故にあつたことを認めることができ、右認定に反する甲五号証の記載は措信しない。
二、被告松原シャーリングの責任について考えてみるのに、同被告が被告大阪土建に三階建社屋新築工事を請負わせたこと、右社屋は地上約9.5メートルの高さで、本件高圧がさらにこの上方約1.5メートルで一部社屋をかするように架設されていることは前記認定のとおりであるが、高圧電線と右のような近接した位置関係になる右社屋の具体的設計を被告松原シャーリングにおいてしたことを認めるに足る証拠はなく、三階建社屋新築工事を計画し、これを被告大阪土建に請負わせたことをもつてただちに注文者としての被告松原シャーリングに注文または指図について過失があるとはいえず、原告の被告松原シャーリングに対する請求は理由がない。
三、被告関西電力の責任について考えてみるのに、同被告が本件高圧電線を所有していること、被告松原シャーリング社屋新築工事の鉄骨組立中、本件高圧電線にポリエチレン絶縁管で被覆工事をしたこと、右ポリエチレン管が本件当日の朝ずれていたため本件事故が起つたことは前記認定のとおりであるが、右ポリエチレン管は工事中の危険除去のため、一時的な応急措置として本件高圧電線に被覆されたものであり、これが本件当日の朝被覆位置からずれていた原因は本件証拠上明らかでなく、また被告関西電力は右被覆工事をした際、被告松原シャーリングに前記のとおり注意を呼びかける文書を交付しているのであるから、いずれにしても被告関西電力の本件高圧電線の被覆工事および設置保存に瑕疵があると認めることはできず、原告の被告関西電力に対する請求も理由がない。
四、被告大阪土建は原告主張事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなすべく、これによれば被告大阪土建は本件事故から生じた損害について賠償する責任があるものというべく、まず、亡隆の得べかりし利益についてみると、亡隆の日給は一、三〇〇円であつたから、一ケ月二五日働くものとして月収三万二、五〇〇円となり、これから生計費一万五、〇〇〇円を差引くと一年間に二一万円の得べかりし利益を喪失したことになり、亡隆は死亡当時三二才で第一〇回簡易生命表によるその余命は三八・八二年であつて建設労務者としては満六三才まで稼働可能と考えられるから、稼働年数三一年間の得べかりし利益から年別複式ホフマン式によつて民法所定年五分の中間利息を差引くと、得べかりし利益の現在額は三八六万八、四一〇円となり、原告は右損害金の請求を相続によつて取得したことになる。そして亡隆の死亡によつて原告が母親として受けた精神的苦痛に対する固有の慰藉料二〇〇万円および、その支出した葬儀費用二万九、〇〇〇円の請求はいずれも理由があるが、弁護士費用五〇万円の請求については、本訴における請求金額、事案の難易、軽重を考慮すると一五万円が相当であり、その余の請求は理由がない。
(北浦憲二 三好吉忠 中根勝士)